L2、L3での通信の仕組みがわかるようになったら、インターネットの世界ではどのようにして通信が行われているのか見ていきましょう。
この記事を読むには少なくともL3での通信の仕組みがわかっている必要があります。
まだ読んでいない方はぜひ読んでみてください!
ダイナミックルーティング
前回 【ネットワーク基礎】IPアドレスでの通信とスタティックルーティング〜L3での通信〜 でスタティックルーティングについて触れましたが、NW機器一つ一つにルーティングを手動で管理するのは非常に大変です。
現在はスタティックルーティングを用いるほうが限定的で、多くは自動的にルーティングテーブルを管理してくれる、ダイナミックルーティングが使われることのほうが多いです。
ダイナミックルーティングにはいくつかプロトコルがありますが、今回は2つだけ紹介します。
OSPF(Open Shortest Path First)
エリアという範囲内でルーター同士がリンク情報を交換しあってルーティングを行います。リンク状態をもとに経路情報を計算することから、LINK state型のダイナミックルーティングプロトコルといえます。
OSPFではエリア内の隣接ルーターでHelloパケットを送り合ってネイバー関係を確立します。ネイバー関係にあるルーターはリンク情報(インターフェースの情報)を送り合います。このリンク情報を送ることをアドバータイズ(Advertise)と言います。
エリア内でリンク情報を送り合うことで、結果としてエリア内のルーター全てでリンク情報を保持することになります。
また、エリアをまたぐルーターのことをエリア境界ルーターと言います。
この情報をもとに、宛先ネットワークへのコストを算出し、コストをもとに経路を決定します。
基本的にOSPFはDC内などの閉じたネットワークで使われます。
参考:OSPFとは
BGP(Border Gateway Protocol)
IANA(Internet Assigned Numbers Authority)という機関が管理しているAS(Autonomous System)番号をもとに経路制御を行います。日本ではJPNICという機関がASを割り当てており、通信事業者などにAS番号を割り当てています。
通信ができる相手のことをピアとよび、ピア同士を通信事業者がつないでいくことでインターネットの世界が出来上がっています。
インターネットの通信の概要を理解するには
- BGPというダイナミックルーティングで経路制御を行っている。
- AS番号というのが各ISP、IX、CDNなどに割り当てられていて、それをもとに経路を決めていく
という2点をまず理解しましょう。
特にASという言葉が重要です。これはAutonomous System というように、自律システムの区分けです。例えばデータセンターや、組織で一つの自律システムを形成して、その中の経路の仕組みは各組織に任せているということです。AS内のダイナミックルーティングプロトコルをIGP(Interior Gateway Protocol)、AS間のダイナミックルーティングプロトコルをEGP(Exterior Gateway Protocol)と区別します。
OSPFはIGPに、BGPはEGPに区分されるというわけです。
プライベートIPとNAT
ところで基礎的な知識に戻りますが、IPアドレスにはグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスという区分けがあります。
クラスA | 10.0.0.0〜10.255.255.255 (10.0.0.0/8) |
クラスB | 172.16.0.0〜172.31.255.255 (172.16.0.0/12) |
クラスC | 192.168.0.0〜192.168.255.255(192.168.0.0/16) |
プライベートIPアドレスは企業内や家庭内で自由に割り当てて良いアドレスとされています。
プライベートIPは組織内でのネットワークでは通信できますが、そこからインターネットの世界に出る際には、ISPから割り当てられたグローバルIPアドレスに変換されて出ていきます。
この変換のことをNAT(Network Address Translation)といいます。
NATには送信元のIPアドレスを変換するSNAT(Source NAT)や宛先のIPアドレスを変換するDNAT(Destination NAT)、ポートも同時に変換するNAPTなどがあります。通常は組み合わせて使われます。
これらのことをポートフォワーディングやIPマスカレードと呼んだりもします。
インターネットでの通信をざっくり理解する
組織内のネットワークからNATしてグローバルIPとしてインターネットの世界へ出ていきます。
インターネット上に出てくるピアの単位を少しだけ紹介します。
これらの相互接続したピアをたどって、目的の場所へと向かうことになります。
ISP(Internet Service Provider)
いわゆるプロバイダーです。自宅でインターネットを使うときに契約する業者です。
ISP同士が相互接続したり、通信の幅を増やす契約を事業者同士で行います。
ですので、契約するプロバイダーや契約内容によって通信の速度や通信量が異なったり、制限が行われていたりするわけです。
IX(Internet Exchange)
AS間の通信や、国家間の通信を相互接続する拠点のことです。
通信が大量に集まる場所であることから、場所は公にされていないことが多いです。
2010年の情報だと、世界中には約300のIXが登録されていて、そのうち日本にはJPIXなど9つが登録されているようです。
参考: インターネット用語1分解説〜Internet Exchange Point(IX; 相互接続点)とは〜
まとめ
インターネットの概要について解説しました。
本記事の内容のそれぞれの項目を掘り下げていくと本来かなり奥が深い内容なのですが、ネットワークエンジニアや通信キャリアなどで仕事をしない限りは、上記程度の理解で十分かと思います。
ただ、OSPFやBGP、今回紹介しなかったRIPなどのダイナミックルーティングの各アルゴリズムは興味のある方は掘り下げて勉強してみると、結構面白いです。
ネットワークスペシャリスト試験を受験するのであれば、これらも掘り下げて学習する必要があります。
WEBページが表示されるまでのネットワークの基礎知識についてはこちらの記事でまとめています。
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